「生活習慣病」とは、過食や偏食、運動不足、嗜好品(タバコ・お酒など)の摂取過多といった生活習慣が主な原因となって起こる慢性疾患のことをさします。
代表的な疾患としては、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症(痛風)などがあります。
生活習慣病は、放っておくと徐々に進行してしまいます。進行すると、脳や心臓、腎臓の重い病気になる可能性が高まります。
高齢になると、加齢による身体の変化もあり、生活習慣病が進行しやすくなってしまいます。若い頃からの持病がある場合は、歳を重ねるにつれてだんだんとコントロールが難しくなります。いくつもの病気を抱える場合も多く、一つの病気の治療に専念できなくなることもあります。
年齢を重ねた後は、生活習慣病の進行を抑えられるよう、ふだんの生活をコントロールし、適切な治療を継続的に受けていくことが重要となります。
高齢になるほど、高血圧の人が増えてきます。例えば、40歳代では高血圧になる方が約4割であるのに対して、70歳代では約7割に増加します。
高齢者の方の高血圧症には、「最高血圧が高くなりやすい」「血圧が高い割に脳の血流量が少ない」「温度差などの影響で、脳卒中や心臓病を起こしやすい」など、若年層の高血圧とは異なる特徴があります。
そのため、治療せず放置してしまったり、生活の中で注意すべきことを知らずに過ごしてしまったりすると、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気につながることが多くあります。
高血圧症の方は、生活習慣の改善や治療・服薬により高血圧の進行をゆるやかにするとともに、過度な血圧の低下を防ぐなど、医師・看護師に相談のうえ、日常生活で注意すべき事項を知ることが重要となります。
高齢になると糖尿病にかかりやすくなり、65歳以上の高齢者では、5人に1人が糖尿病または糖尿病予備群との統計もあります。
高齢者が糖尿病になりやすい理由は、加齢によるインスリン分泌の低下や、活動量の減少に伴う筋肉量の減少と肥満の増加などによるものとされています。
年齢を重ねると腎臓や肝臓の働きが低下してきますので、高齢の方の糖尿病の場合、低血糖によって腎不全を併発したり、認知機能の低下につながるリスクも増えます。また、高齢になると、動悸やふるえ、冷汗、など低血糖の自覚症状に気が付きにくくなるなどの弊害があります。
高齢で、すでに糖尿病を発症している方には、医師とご家族、介護者が連携して、住環境、介護体制、生活習慣の改善など、患者さま個々にあわせた方法を考え、実行していくことが重要です。
「脂質異常症」とは、血液中の脂質(脂肪分)の値が、一定の基準値以上となっている状態をさします。
血液中の脂質には、コレステロールと中性脂肪があり、コレステロールはLDL(悪玉)コレステロールとHDL(善玉)コレステロールに分けることができます。
脂質異常症は、LDLコレステロールや中性脂肪の値が高くなることによって、血管が硬くなって弾力性が失われる動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞を発症する危険性が高くなってしまいます。
脂質異常症の中でも、特に注意が必要なのは、LDLコレステロールの値です。LDLコレステロールは動脈硬化・脳梗塞の発症と強い関連性があるとされています。動脈硬化・脳梗塞は、動脈や脳の血管の内側に脂質と繊維状の成分が結合することで血管が固くなり、徐々に弾力性が失われることによって起こります。
脂質異常症の方には、生活習慣を改善するためのサポートを行うとともに、LDLコレステロールの値を下げる薬の処方などで、治療を行っていきます。
狭心症とは、動脈硬化などにより心臓の冠状動脈の血管が狭くなり、血液の流れが低下し、心臓の筋肉(心筋)への栄養や酸素の供給が不足することで起こる病気です。
冠状動脈の血管が塞がれることで、血液の流れがさらに悪くなり、心筋が酸素不足によって壊死すると、心筋梗塞となります。
狭心症・心筋梗塞ともに、胸の痛みや圧迫感といった症状がでますが、狭心症では15分程度と一時的なのに対して、心筋梗塞になると30分以上継続し、安静にしていたり、ニトログリセリンを服用するなどしても、症状が治まりません。
高齢の方が狭心症となっても、症状が乏しく自覚できない、症状を的確に説明できない場合も多くあります。ご家族や介護者が日頃の状態を観察・判断し、早期に診察を受けることが重要となります。
また、高血圧・糖尿病・脂質異常症になると動脈硬化を起こしやすくなり、狭心症・心筋梗塞のリスクが高まります。生活習慣の改善やこれらの病気の適切な治療により、狭心症の発症や心筋梗塞への進行を防いでいくことが大切です。